俺が、好きになっちゃダメ?
「ところで、なんであなたはここにいるの」
わたしがそう睨みながら聞くと、相手も睨み返してくる。
「お前こそ、なんでだよ」
「だってわたし、ここら辺に住んでるんだもの」
「ふーん」
こう言ったきり、自分の事情をなかなか話そうとしない。
なんでここにいるの、と先に聞いてきたのはわたしなのに、もう忘れたのだろうか。
仕方ないので、わたしはもう一度質問を繰り返した。
「で? あなたは、どうして?」
「ここら辺、俺のじいちゃんとばあちゃんも住んでるから、俺は時々来るんだよ」
向こうの事情を知ったわたしは、口を結ぶ力を強めた。
「まさか、あいつの元カノが俺のじいちゃんばあちゃんの家とそんなに離れてないところに住んだなんて」
それは、わたしだって同じことなのに。
玲を死に追いやった人のおじいちゃんとおばあちゃんが、わたしの家の近くに住んでいるだなんて思わなかった。
おじいちゃんとおばあちゃんには、もちろん罪はないけれど、一生をかけても許さない存在と血が繋がっている人が住んでいることが衝撃なんだ。
元カノ、元カノ、と言っていることにも腹が立つ。
もう玲は帰ってこないといえど、わたしは今でも玲を元彼ではなく彼氏という目で見ているのに。
わたしは、重い足取りでそのモリシタイオリという人物から離れた。