俺が、好きになっちゃダメ?
あの人に遭遇したせいで、こんなに冷たいラムネを飲んでも、いつもやってくるさっぱりした気持ちが来なかった。
それどころか、この冷たさが余計に心の痛みを強くしてきているように、なんだかチクチクする思いだった。
「おーい、雫ー!」
わたしの暗くなった気持ちを一瞬で突き破るかのように、明るい声が耳に飛び込んだ。
「夏芽!」
近づいてきたのは、緑の生地に白い梅模様の浴衣をきれいに着こなした夏芽だった。
「どうしたの? なんだか雫、顔色が悪いような……」
夏芽は、わたしの顔を見て心配そうな表情をしてくる。
ここに、玲をいじめた人が来たことを説明するのはややこしいし、夏芽にこういう時にまで苦しい思いをさせるのは良くないよね……。
「……ううん、なんでもない!」
わたしは、首を横に振った。
「……そっか! なら、いいんだけど。どこの屋台に行ってみる?」
「そうだなぁー……。あっ、せっかくだし、ヨーヨーやんない?」
「いいねいいねー!」
わたし達は、なれない下駄で一歩一歩前に進みながらヨーヨーの屋台へと行った。