初恋わすれ
「同じクラスのケンタと掃除しながら、確か、初恋の事を話した後……考えごとしてて……階段から転げたの」

「え!また転げたの?!」

「うん、全然大したことないんだけど」

リンは、小さい頃から、よく転ぶのだ。いつも転んで擦りむいた、リンをおぶって帰るのが、リョウの役目だった。

「見せて」

リンは、履いているスカートを両手で少しだけ捲る。リョウは、リンの両の膝小僧をじっと眺めた。確かに朝なかった、青あざが、左右対称に二つ付いている。

「リョウ、すごいでしょ?何がどうなったのか分からないけど、上手に膝から着地したの」

目をキラキラさせながら、上手に転んだ事をリョウに褒めてほしそうに、にんまり笑うリンの額を、リョウは、人差し指でツンと弾いた。

「青くなってんじゃん!大怪我したらどうすんだよっ。気をつけろよな。リンは、そそっかしいんだから」

「……うん……」

ーーーーしまった。

せっかく涙が、引っ込んでいた、リンは、また涙を浮かべ始めている。
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