お姫様達は王子様と永遠に
「あのね、麗夜(れいや)さんが、お呼びよ。来季からのCMソングの件で、あ!」

実花子が、麻美のところへ駆け出していく。

「星川さんっ、あの……」

「え?棚田さん、何か……?」

麻美が、驚きながら、実花子を見上げた。

「あの、颯から聞いたんだけど……私……足立京(あだちきょう)の大ファンで……あのサインが、欲しくて……」

実花子が、ほんのり頬を染める。

「あ、いいですよ、言っときます」

麻美が、ニコッと笑う。

「キャーッ、嬉しいっ、ありがとうっ」

口元を抑えながら、実花子が、小さくガッツポーズをした。

「実花子、うるせぇぞ!てゆうか、行くぞ」

颯が、パソコンを抱えると、デスクから立ち上がる。

「あ、分かった!」

すると、颯について事務所から出て行こうとした実花子の手首を、眉間に皺を寄せた千歳が、通りすがりに掴んだ。

「え!ちょ……千歳、何よ!」

見れば、千歳は、明らかに不機嫌な顔で、口まで尖らせている。

(え?さっきまでの颯とおんなじ顔……)

「おい、北沢!勤務中だろうが!実花子から手離せよ!なんだよ、急に!」

「悪いですけど、実花子に急ぎの案件できたんで、先、専務室に行っててください」

「え?千歳?」

実花子が、切長の瞳を見開いてキョトンとしている。
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