【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
(やはり、拒まれている? 敢えて隠す作戦は失敗だった?)
 久しぶりに会ったのだから、熱い抱擁があってもいいと思っていた。何より、二人は夫婦である。再会したら熱い抱擁を、と言っていたのは誰だったろうか。
(となれば、最後の手段よね。隠して駄目なら曝け出せ……)
 これも年上の子爵夫人からの助言である。敢えて隠してからの曝け出し。そのギャップに普通の男であればメロメロになるはずだと、子爵夫人は言っていた。
 オリビアはドレスをしゅるりと脱ぎ、シュミーズ一枚になる。
(よし。女は度胸よ。それに、成人だってしたのだし、立派な大人よ。胸も……多分)
 オリビアは意を決し、浴室へと続く扉を開けた。手前の脱衣所には彼の脱いだ服が散らばっている。それを丁寧に畳み、籠の中へと入れる。
 脱衣所から浴室へと続く扉はすりガラスの引き戸になっていて、その奥にぼんやりと人影が見える。
 ザバンザバンと、お湯をかぶる音が聞こえた。その音が止んだ頃、オリビアは声をかける。
「旦那様。お背中をお流ししましょうか?」
 ぼんやりとした人影が、大きく震えた。だが、返事はない。
「失礼します」
「ちょ、ちょっと待て」
 クラークの慌てた様子が手に取るようにわかったが、度胸を纏ったオリビアは彼のその言葉に従わずにすりガラスの扉を開けた。
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