【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
「私、先にあがりますね。身体も温まりましたので」
 これ以上、クラークとアトロの話をしたら、涙は溢れてくるだろう。自分でもわからぬ感情を、制御できる自信はなかった。
「ああ。そうだ」
 浴槽から出ようとしたオリビアは、クラークに呼び止められた。
「ありがとう」
「着替えは、準備してありますので」
 彼の礼の言葉を耳にしたオリビアは、振り返ってわざとらしく、元気のいい声をあげた。
 一瞬、彼と目が合った。
 だが、すぐに視線を逸らされた。
(なんで……?)
 彼が視線を逸らしたことに、もちろんオリビアも気がついた。
(やはり、拒まれている……。隠す作戦も、曝け出す作戦も失敗。やはり、貧相な胸がいけないのかしら……)
 すりガラスの扉で彼との空間を分離した後、彼女は唇を噛みしめて、濡れたシュミーズを脱ぎ捨て、籠に入れた。しっとりと水分が含んでいるが、気にしている余裕などない。
 彼に拒まれたその事実が、オリビアの心を悩ませていた。
 新しい下着を身に着けると、先ほどとは異なる簡素なドレスに着替えた。
 部屋の方に戻り、ソファにゆっくりと腰を落ち着ける。
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