【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 ひたっと、背中に彼女の手が触れた。
(手……。手が触れている。間違いなく手だ)
 クラークは、アトロとの約束を思い出すことにした。そうすることで、今までも耐えてきたのだ。
 むしろ、あの熊のようなアトロから、なぜ可憐なオリビアが生まれたのかと、不思議に思ったことも多々あった。
 だからこそ、アトロの存在がクラークにとっての心の制御となる。
「痛くはありませんか?」
「ああ……。すまないな。汚れているのに」
「だから、洗うのです」
 とりあえずアトロのことを思い出すことで、心を落ち着ける。
 アトロと風呂を共にしたこともある。
 クラークが彼の背を流したこともある。アトロも嬉しそうにクラークの背を流してくれた。
(そうだ……。団長だ、団長が背中を洗ってくれている……)
 そう思わないとやっていられない。身体の全てが反応してしまう。
「無事に帰って来てくださって、安心しました」
 オリビアのその言葉が、クラークの心に突き刺さった。
(なんだ……。天使か? 天使がいるのか? もしかしてここは、天使がいる世界なのか? 団長が天使になったのか?)
 そう思ってしまうくらい、クラークの気持ちは高鳴っていた。
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