【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 つまりクラークは、アトロから爵位と団長の地位と、そして娘を受け継いだのだ。
 だからこそ聞こえてくる、周囲からの黒い声。
(クラークは、そんな人ではないのに……)
 オリビアは嫌がるクラークを無理矢理社交界に連れ出し、仲睦まじい夫婦の姿を周囲に見せつけようと試みているが、肝心のクラークはむっと頑なに口を結んで、必要最小限の会話しかしない。そして、義務的にオリビアと一曲踊る程度だ。
 そんなオリビアを見かねた他の男性が彼女に声をかけようとすれば、クラークは彼女の手を取り、他の場所へと移動する。
 だから、余計にオリビアがクラークに虐げられていると、そんな噂が立ってしまうのである。
 そしてその噂の主が、オリビアの母親の兄であることを、彼女も知っていた。
 伯父は、このディブリ家を狙っているのだ。アトロが亡くなったときに、オリビアの後見人として名乗り出たのも伯父である。
 だが彼女は、すでにクラークと結婚した後であったため、それから逃れることができた。
 クラークには感謝しかない。
 同時に、オリビアには重大な悩みがあった。
(私は、女性としての魅力に欠けているのかしら?)
 結婚して二年。彼にとっては望まぬ結婚であったかもしれない。
 それでも毎日同じベッドで眠っているのだから、少しくらいムラムラしてくれてもいいだろう。
< 4 / 90 >

この作品をシェア

pagetop