【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
「いや……。その映画で良かったのかと思っていただけだ」
「はい。楽しみにしております」
 その言葉で、ほっと胸を撫でおろす。
 クラークはすでにジャンから映画のチケットをもらっていた。ジャンはよほど映画が好きなのだろう。二日前に相談をしたら、今日には映画のチケットを手配してくれていたのだ。
「未だに人気の演目のようでな。日にちと時間も指定で……、明後日の午後からなのだが、君の予定は大丈夫だろうか?」
 ジャンが言うには、最短でチケットを取れたのがその日のその時間とのことだった。
 映画館にはさまざまな人間が足を運ぶため、入口も二か所に分かれているらしい。
 クラークとオリビアであれば、いい席の方がいいだろうとジャンは判断したようだ。平民のための安い席は空いているようだが、いい場所でちょっと値が張る席は、常に満席とのことだった。
(さすがに彼女を、平民の席に座らせるわけにはいかない。ただでさえ注目を浴びているのに、余計に視線を集めてしまう。となれば、予定が合わなければチケットの日時を変更する必要があるな)
 これもジャンから仕入れた情報でもある。
「はい。楽しみにしております」
 彼女の形の良い唇から、そう言葉が紡ぎ出されたことに安堵する。
「そうか……。それは良かった」
 だがその感情を言葉に乗せることはしない。何しろクラークは大人の男性なのだ。年甲斐もなく喜んで、オリビアから冷たい視線を向けられるようなことは、あってはならないのだ。
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