【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 クラークがこの店に入るのには、かなり抵抗がある。だが、あのジャンでさえここに入ったことがあるというのであれば、負けてはいられない。
 オリビアが顔を輝かせて、扉を開ける。扉の前に立った瞬間から、甘い香りに包まれたような気がした。
 チリン――。
 鈴が鳴る。
「いらっしゃいませ」
「あの。モーレン公爵夫人の紹介で……」
「モーレン公爵夫人の紹介ですね」
 オリビアがカトリーナの名前を出すと、妖精のようなふわふわした店員の顔がぱっと輝いた。
「お話は伺っております。どうぞ、こちらに」
 オリビアは妖精に連れていかれる。となれば、クラークはどうすべきなのか。
「ご一緒に選びますか? モーレン公爵もカステル侯爵も、いつもご一緒に選ばれております」
 ジャンの名前を出されてしまえば、なぜかクラークも対抗心を燃やしてしまう。
「では、俺も一緒に……」
 消え入るような声で言ったにも関わらず、妖精のような店員の耳にはしっかりと届いていたようだ。
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