【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 案内された店の中は、華やかな色の下着が展示されている場所と、落ち着いたデザインの下着が展示されている場所に分かれていた。
(あ、あれは……。オリビアに似合うかもしれない)
 菫色のフリルのついた下着に、つい目を奪われてしまった。
(って、俺は何を考えている。なぜモーレン公爵までもここに来るんだ?)
 人のせいにしてしまいたくなるほど、クラークは混乱していた。
 とにかく、前を見ても後ろを見ても、右も左も上も、女性向けの下着が展示してある。
「奥様。こちらなどいかがでしょう?」
 店員が手にしている下着は白。フリルがふんだんに使われている可愛らしい下着である。
(し、白だと……? 破壊力が……。これは、俺を試しているのか? おい、ジャン。お前はどうしているんだ)
 尋ねても返事など戻ってくるわけはない。
「あの。もう少し大人っぽいものはありませんか?」
 どうやらオリビアは白の下着はお気に召さなかった様子。
(いや。今のがいいだろう? 白だぞ、白。白は正義だ)
 クラークは自分でも気づいていない。彼の好みが白の下着であることに。
「では、こちらはいかがでしょう?」
 次は黒だった。こちらは、総レースの下着である。
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