【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました 1
御劔邸2
「一階はまだ部屋があるけど、あとで紹介する。とりあえず上に行こうか」
まっすぐ進むと突き当たりの壁いっぱいを使った巨大な抽象画があり、それも間接照明に照らされていて雰囲気がある。
絵画の下にはマントルピースと暖炉があった。
「この暖炉、火がつくんですか?」
「ん? 本当の暖炉や薪ストーブは憧れるけど、煙が出る。うちにあるのは全部、バイオエタノールの暖炉だよ」
「はぁ……」
よく分からないが、煙の出ないエコでお洒落な暖炉、という解釈をした。
暖炉の手前には向かい合ったソファがあり、中央には大理石のテーブルが配置されている。
ちょっとした用事の客なら、ここでもてなせそうだ。
ソファセットと絵画の左側に、木製の手すりが優美にカーブを描いた階段があり、手前と奥に分かれている。
佑は階段の手前側に向かって上っていった。
途中、階段が左右に分かれる踊り場には高価そうで大きな絵画がある。
その下にはコンソールテーブルがあり、趣味のいい配色の花が飾られてあった。
振り向くと応接セットの右側には、飾りガラスの嵌められたドアがあり、恐らくその中がリビングダイニングになっているのだろう。
「はぁ……」
上を見ると、暖炉の真上にはシーリングファンがあり、玄関側にはシャンデリアがある。
(凄いな……。本当に)
もうこの時点でお腹一杯になりかけている香澄は、息をついて階段を上がった。
「リビングダイニングの上は吹き抜けになっている。玄関から家の左半分と、リビングダイニングの奥部分に、二階と三階のフロアがある造りになっているんだ。あと、一応エレベーターもあるから、足腰がつらい時は使って」
階段を上がった佑は、横にあるエレベーターを示して言う。
一階のエレベーターは、丁度左右の階段が始まる中央にあった。
二階はフローリングの床が続き、部屋が幾つもあってホテルのようだ。
奥の階段を上った方にも廊下があるところから、フロアはロの字型になっているのだろう。
佑は順番に部屋を紹介してくれる。
「こっちの一番近い場所から、俺のウォークインクローゼット、それから主寝室。隣の空間は、主寝室のバスになる。で、こっちは書斎」
言いながら佑はどんどん歩いて行くのだが、その歩行距離がすでに一般家庭のものではない。
「……で、ここからは客間というか……、空き部屋かな」
佑が部屋の一つに入り、照明をつける。
中は十畳ほどの洋室で、全体的にガランとした中にソファセットとベッドがあり、どこかホテルのようだ。
「奥のドアは、この部屋のバストイレに通じる物だ。もっと行くとウォークインクローゼットに通じている」
「はぁ……」
(十分凄いな)
呆れ半分に見ている香澄は、もう現実的な感想を口に出せないでいる。
「もし……、その」
「ん?」
急に佑が歯切れ悪くなり、香澄は聞き逃さないように彼を見る。
「嫌でなかったら、この部屋をメインに過ごしてもらえると、何かあってもすぐ対応できるし、コミュニケーションを取れると思うんだ」
「あ、あー……」
そう言えば両親と話していた時、香澄と同棲するに当たって、拒否感があるなら違うフロアの空き部屋も用意できると言っていたと思い出す。
(しかし……、この規模のお屋敷の別フロアって言ったら……)
誰もいないガランとした三階に、自分一人がいるのを想像すると、どこか怖くなってしまう。
「一応、こっち側にも部屋はある」
香澄の部屋に、と言われた場所の右手にはリビングが広がっていた。
足元は毛足の長いラグマットが敷かれ、大きな液晶テレビがあり、ソファセットや流しまである。
(ここだけでも生活できそう)
佑はその空間を通り抜け、二階のコの字になっている裏側を手で示した。
「こっちの部屋も普段は使っていない。一部は物置とか、着ていない服を収納してる。基本的に三階も同じ造りだけど、何なら三階も……」
「あの!」
香澄はビシッと挙手した。
「はい、香澄」
佑もその〝生徒ノリ〟に乗ってくれ、香澄を指名してくれる。
「私、さっきの部屋でいいです。いいですっていうか……お願いします」
「本当か?」
「はい。思っていたよりお屋敷がずっと大きくて、人気のない所に一人で寝るのが……ちょっと怖くて」
「だよな」
佑はクシャッと笑う。
「友人や親戚が、家族単位で泊まりに来てもいいように、って思ったんだ。御劔家の親族は埼玉や関東住まいだから、あまり泊まらないけど、ドイツ関係の親戚が来た時は少し大所帯になる事もあるから」
「あぁ……、なるほど」
なぜここまで無駄に、と言っていいほど広い造りにしたのか、やっと理解できた気がする。
「ちなみに、このリビングの奥に二階のパブリックバスやトイレがある」
「はぁ……」
個人の部屋にバスがあったり、フロアごとにバスがあったり大変だ。
「今まで一人で住んでいて、寂しくなかったですか?」
「確かに、寂しかった」
佑は否定せず笑い、その笑顔を見て香澄は親しみを覚える。
「俺は成金みたいなものだから、本社のあるTMタワーもだけど、自己顕示欲があってこの家やビルを建てたっていうのもあるかな」
「そんな、成金だなんて……」
香澄が知っている限り、佑は高級車と言えば、なドイツのクラウザー社の会長の孫で、彼のやる事に世界中が注目している。
いわばサラブレッドな彼が自身を「成金」と言うのは、自嘲めいていて、勝手ながら「似合わない」と思ってしまった。
二人は来た道を戻り、香澄の部屋――と決まった部屋に戻る。
「ウォークインクローゼットにも繋がってるけど、部屋にも大きめのクローゼットがあるから、好きに使って」
「はい」
とりあえずコートを脱ごうと思い、香澄はクローゼットを開けてハンガーを探した。
「えっ?」
が、クローゼットにはすでに様々な色の服がずらっと並んでいて、思わず声が出て固まった。
「あ、来てすぐ着替えに困らないように、勝手だけど俺が似合いそうと思った服を適当に入れておいた」
「適当に……って……」
クローゼットには適当にとは思えないほど、服が綺麗にカラー別でグラデーションになっている。
「これ、便利なんだ。奥行きがあるけど、ここのボタンを押すと……ほら」
佑がクローゼット手前にあるボタンを押すと、ウィーンと音がしてハンガーが掛けられている支柱が回転する。
要するに、クローゼットの支柱は円になっていて、自動的に奥の服も手前に来る算段だ。
「はぁ……」
服が詰まっていたのは見える所だけだったので、とりあえず空いているハンガーを手に取ってコートを掛ける。
(思っていたより……。ずっと用意周到だった……)
「あっ! っていうか、ここにある服のサイズって、札幌で測った……!」
ホテルで採寸された事を思い出し、香澄はサッと赤面する。
「ご名答」
にっこり笑った佑の笑顔を見て、香澄はうすら寒いものを感じた。
(どこから計算してたの!? あの採寸の段階で、同棲にもつれ込む事まで考えてた?)
イケメンセレブで、有名大学を出ている彼の頭の中が分からず、香澄は恐れすら抱く。
「とりあえず、リビングに下りようか。貴恵さんの飯ができたら、すぐ食べられるようにしておこう」
「……は、はい……」
御劔邸に来てまだ三十分も経っていないのに、香澄はすでに疲弊しつつあった。
「はぁ……」
もう驚かないようにと思ったのに、何十畳あるか分からないリビングダイニングを目にして、溜め息しか出ない。
もはや学校の体育館では、と思う空間には、人が何人座れるか分からないソファがあり、テレビに至ってはこんなインチ数が市販されているのか? と疑うほどだ。
テレビの左右にはタワーステレオがあり、さぞいい音で映画を見られるのだろう。
リビングにも当たり前、というようにバイオエタノール暖炉があり、その前にはローソファやゴロゴロできる一角があり、寛いだら気持ちよさそうだ。
まっすぐ進むと突き当たりの壁いっぱいを使った巨大な抽象画があり、それも間接照明に照らされていて雰囲気がある。
絵画の下にはマントルピースと暖炉があった。
「この暖炉、火がつくんですか?」
「ん? 本当の暖炉や薪ストーブは憧れるけど、煙が出る。うちにあるのは全部、バイオエタノールの暖炉だよ」
「はぁ……」
よく分からないが、煙の出ないエコでお洒落な暖炉、という解釈をした。
暖炉の手前には向かい合ったソファがあり、中央には大理石のテーブルが配置されている。
ちょっとした用事の客なら、ここでもてなせそうだ。
ソファセットと絵画の左側に、木製の手すりが優美にカーブを描いた階段があり、手前と奥に分かれている。
佑は階段の手前側に向かって上っていった。
途中、階段が左右に分かれる踊り場には高価そうで大きな絵画がある。
その下にはコンソールテーブルがあり、趣味のいい配色の花が飾られてあった。
振り向くと応接セットの右側には、飾りガラスの嵌められたドアがあり、恐らくその中がリビングダイニングになっているのだろう。
「はぁ……」
上を見ると、暖炉の真上にはシーリングファンがあり、玄関側にはシャンデリアがある。
(凄いな……。本当に)
もうこの時点でお腹一杯になりかけている香澄は、息をついて階段を上がった。
「リビングダイニングの上は吹き抜けになっている。玄関から家の左半分と、リビングダイニングの奥部分に、二階と三階のフロアがある造りになっているんだ。あと、一応エレベーターもあるから、足腰がつらい時は使って」
階段を上がった佑は、横にあるエレベーターを示して言う。
一階のエレベーターは、丁度左右の階段が始まる中央にあった。
二階はフローリングの床が続き、部屋が幾つもあってホテルのようだ。
奥の階段を上った方にも廊下があるところから、フロアはロの字型になっているのだろう。
佑は順番に部屋を紹介してくれる。
「こっちの一番近い場所から、俺のウォークインクローゼット、それから主寝室。隣の空間は、主寝室のバスになる。で、こっちは書斎」
言いながら佑はどんどん歩いて行くのだが、その歩行距離がすでに一般家庭のものではない。
「……で、ここからは客間というか……、空き部屋かな」
佑が部屋の一つに入り、照明をつける。
中は十畳ほどの洋室で、全体的にガランとした中にソファセットとベッドがあり、どこかホテルのようだ。
「奥のドアは、この部屋のバストイレに通じる物だ。もっと行くとウォークインクローゼットに通じている」
「はぁ……」
(十分凄いな)
呆れ半分に見ている香澄は、もう現実的な感想を口に出せないでいる。
「もし……、その」
「ん?」
急に佑が歯切れ悪くなり、香澄は聞き逃さないように彼を見る。
「嫌でなかったら、この部屋をメインに過ごしてもらえると、何かあってもすぐ対応できるし、コミュニケーションを取れると思うんだ」
「あ、あー……」
そう言えば両親と話していた時、香澄と同棲するに当たって、拒否感があるなら違うフロアの空き部屋も用意できると言っていたと思い出す。
(しかし……、この規模のお屋敷の別フロアって言ったら……)
誰もいないガランとした三階に、自分一人がいるのを想像すると、どこか怖くなってしまう。
「一応、こっち側にも部屋はある」
香澄の部屋に、と言われた場所の右手にはリビングが広がっていた。
足元は毛足の長いラグマットが敷かれ、大きな液晶テレビがあり、ソファセットや流しまである。
(ここだけでも生活できそう)
佑はその空間を通り抜け、二階のコの字になっている裏側を手で示した。
「こっちの部屋も普段は使っていない。一部は物置とか、着ていない服を収納してる。基本的に三階も同じ造りだけど、何なら三階も……」
「あの!」
香澄はビシッと挙手した。
「はい、香澄」
佑もその〝生徒ノリ〟に乗ってくれ、香澄を指名してくれる。
「私、さっきの部屋でいいです。いいですっていうか……お願いします」
「本当か?」
「はい。思っていたよりお屋敷がずっと大きくて、人気のない所に一人で寝るのが……ちょっと怖くて」
「だよな」
佑はクシャッと笑う。
「友人や親戚が、家族単位で泊まりに来てもいいように、って思ったんだ。御劔家の親族は埼玉や関東住まいだから、あまり泊まらないけど、ドイツ関係の親戚が来た時は少し大所帯になる事もあるから」
「あぁ……、なるほど」
なぜここまで無駄に、と言っていいほど広い造りにしたのか、やっと理解できた気がする。
「ちなみに、このリビングの奥に二階のパブリックバスやトイレがある」
「はぁ……」
個人の部屋にバスがあったり、フロアごとにバスがあったり大変だ。
「今まで一人で住んでいて、寂しくなかったですか?」
「確かに、寂しかった」
佑は否定せず笑い、その笑顔を見て香澄は親しみを覚える。
「俺は成金みたいなものだから、本社のあるTMタワーもだけど、自己顕示欲があってこの家やビルを建てたっていうのもあるかな」
「そんな、成金だなんて……」
香澄が知っている限り、佑は高級車と言えば、なドイツのクラウザー社の会長の孫で、彼のやる事に世界中が注目している。
いわばサラブレッドな彼が自身を「成金」と言うのは、自嘲めいていて、勝手ながら「似合わない」と思ってしまった。
二人は来た道を戻り、香澄の部屋――と決まった部屋に戻る。
「ウォークインクローゼットにも繋がってるけど、部屋にも大きめのクローゼットがあるから、好きに使って」
「はい」
とりあえずコートを脱ごうと思い、香澄はクローゼットを開けてハンガーを探した。
「えっ?」
が、クローゼットにはすでに様々な色の服がずらっと並んでいて、思わず声が出て固まった。
「あ、来てすぐ着替えに困らないように、勝手だけど俺が似合いそうと思った服を適当に入れておいた」
「適当に……って……」
クローゼットには適当にとは思えないほど、服が綺麗にカラー別でグラデーションになっている。
「これ、便利なんだ。奥行きがあるけど、ここのボタンを押すと……ほら」
佑がクローゼット手前にあるボタンを押すと、ウィーンと音がしてハンガーが掛けられている支柱が回転する。
要するに、クローゼットの支柱は円になっていて、自動的に奥の服も手前に来る算段だ。
「はぁ……」
服が詰まっていたのは見える所だけだったので、とりあえず空いているハンガーを手に取ってコートを掛ける。
(思っていたより……。ずっと用意周到だった……)
「あっ! っていうか、ここにある服のサイズって、札幌で測った……!」
ホテルで採寸された事を思い出し、香澄はサッと赤面する。
「ご名答」
にっこり笑った佑の笑顔を見て、香澄はうすら寒いものを感じた。
(どこから計算してたの!? あの採寸の段階で、同棲にもつれ込む事まで考えてた?)
イケメンセレブで、有名大学を出ている彼の頭の中が分からず、香澄は恐れすら抱く。
「とりあえず、リビングに下りようか。貴恵さんの飯ができたら、すぐ食べられるようにしておこう」
「……は、はい……」
御劔邸に来てまだ三十分も経っていないのに、香澄はすでに疲弊しつつあった。
「はぁ……」
もう驚かないようにと思ったのに、何十畳あるか分からないリビングダイニングを目にして、溜め息しか出ない。
もはや学校の体育館では、と思う空間には、人が何人座れるか分からないソファがあり、テレビに至ってはこんなインチ数が市販されているのか? と疑うほどだ。
テレビの左右にはタワーステレオがあり、さぞいい音で映画を見られるのだろう。
リビングにも当たり前、というようにバイオエタノール暖炉があり、その前にはローソファやゴロゴロできる一角があり、寛いだら気持ちよさそうだ。