御曹司の幼なじみから甘すぎる求愛を受けました。
『そうだよね!』


妃奈もそんなふうに笑ってくれると思った。


だけど、みるみるうちに妃奈の表情は曇っていく。


「凪くんは…嫌なの?」


今にも泣き出しそうな顔。


妃奈……??ダメだ、全く分からない。


妃奈がなんでそんな顔をしているのか。


「……喧嘩は…したくない」


分からないからこそ、正直に答えてしまった。


「そっか……」


あとで振り返れば、それが間違いだったと分かるのに。


「ごめん、今日は家に帰る」


「…は、?妃奈?どうして…」


この家で暮らすようになってから、妃奈が自分の家に戻ることはなかった。


『寂しくなる時もあるけど、凪くんといるの楽しいから』って……笑っていたのに。


「ごめんね、凪くん」


俺の横を通り抜けて、急いで2階へと上がっていく妃奈。


また降りてきてくれるか、とリビングで待っていると、予想通り妃奈は階段を下ってきてくれた。
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