御曹司の幼なじみから甘すぎる求愛を受けました。
凪くんの嬉しそうな顔を見ると私も嬉しくなる。


だけどそんな凪くんは…


『東雲』という看板を背負って、多くの世界で妬まれ、どれほどの量の卑劣な言葉を投げかけられてきただろう。


傷つかないわけがなかったはずなのに、凪くんは私の前でいつも笑ってくれていた。


それどころか私に投げられた言葉を普段は見ないような姿で怒ってくれた。






それを考えたら………


私、向き合わないと。





血が滲むほど下唇を強く噛んで、私は着信履歴から東雲家本邸に電話をかけた。



『胡桃様ですね、お電話お待ちしておりました』


「ありがとうございます。あの、私…本邸に行きたいです」


覚悟を決めて真っ直ぐに告げると、高橋さんは電話越しに優しく笑った。


「ありがとうございます、胡桃様」


その声がただただ温かくて。


私の心に溶けていくようで。
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