御曹司の幼なじみから甘すぎる求愛を受けました。
「凪くん?」


そんな中もう一度名前を呼ぶ。


と……凪くんは困ったような表情を浮かべて、綺麗な髪をかきあげた。


「俺が妃奈を甘やかしたいのに、妃奈が俺を甘やかさないで」


「へ…??」


私がアホっぽい声をもらしてしまった直後、周りのみんなの声が一気に大きくなった。


何かと思って見てみると、もうすぐで800mというところで、原田さんが抜かされてしまっていた。


原田さんは5走目だから、もうすぐ私の番がくる。


次の人に渡ったところで順位は3番目。


わぁ、みんな速すぎる……これ私が絶対足引っ張っちゃう……


順位を下げる自信しかない。


「妃奈」


「…はい」


「いいんだよ、無理しなくて。抜かされても遅くなってもいい。俺がなんとかする。だから妃奈は妃奈なりに頑張っておいで」


凪くん………


励ましてくれる凪くんの声が、言葉が私の心の奥にストンと落ちていく。
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