御曹司の幼なじみから甘すぎる求愛を受けました。
どうか返事をして欲しくて、願うように目を瞑る。


「大丈夫だよ、俺はここにいる」


あ、………凪くん……


優しいその声色に、心臓が落ち着きを取り戻す。


いや、取り戻したのも束の間……


近くで今まで何度も聞いてきた地響きのような音が鳴った。


………これは、、


雷が落ちた音。


私の大嫌いな音。


今まで何度も聞いてきて、その度に体を震わせてきた。


そして今も、例外ではなかった……


「やっ、、、」


「妃奈?」


凪くんが名前を呼んでくれたけど、私は雷の音への恐怖心から、全てを遮断するように耳を塞いでしまった。


だから、それ以降は何も聞こえなかった。


当然、凪くんの優しい声も。


ううっ、


高校3年生にもなって、こんなの情けないのは分かってる。


だけど、どれだけ年月が経っても克服できないの。

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