断る――――前にもそう言ったはずだ
エルネストはモニカのことを一瞥すると、誰と会話をするでもなく、そのまま夜会会場を後にした。
ピンと張り詰めた空気が、一気に緩む。
モニカはほっと胸を撫で下ろした。
「モニカ! 殿下とは一体何を……」
「お父様」
慌てた様子でやって来た父親に、エルネストとの会話の内容を伝える。
モニカの父親は時折険しい表情を浮かべつつ、一人静かに首を捻った。
「申し訳ございません、お父様。殿下の気分を害してはいけないと分かっていたのですが……どうにもわたくしは、彼のお気に召さないようで」
「いや、良いんだ。しかし……」
良い、と口にしつつも、父親の表情はどこか浮かばない。
今後の仕事に影響するのではなかろうか――――申し訳無さでいっぱいだった。
モニカは肩を落としつつ、己の手のひらをじっと見る。
今も未だ、エルネストのぬくもりが残っている気がした。
(もう二度と、殿下とダンスを踊ることはないんだろうな)
ほんの数分間の出来事だが、一生忘れられないほろ苦い思い出になりそうだ。
モニカはため息を一つ、エルネストと踊ったホールを見遣る。
けれど、それから数日後。
モニカは父親と共に、エルネストと彼の両親から呼び出しを受けることになる。
そこで言い渡されたのは、彼女にとって驚くべき内容だった。
ピンと張り詰めた空気が、一気に緩む。
モニカはほっと胸を撫で下ろした。
「モニカ! 殿下とは一体何を……」
「お父様」
慌てた様子でやって来た父親に、エルネストとの会話の内容を伝える。
モニカの父親は時折険しい表情を浮かべつつ、一人静かに首を捻った。
「申し訳ございません、お父様。殿下の気分を害してはいけないと分かっていたのですが……どうにもわたくしは、彼のお気に召さないようで」
「いや、良いんだ。しかし……」
良い、と口にしつつも、父親の表情はどこか浮かばない。
今後の仕事に影響するのではなかろうか――――申し訳無さでいっぱいだった。
モニカは肩を落としつつ、己の手のひらをじっと見る。
今も未だ、エルネストのぬくもりが残っている気がした。
(もう二度と、殿下とダンスを踊ることはないんだろうな)
ほんの数分間の出来事だが、一生忘れられないほろ苦い思い出になりそうだ。
モニカはため息を一つ、エルネストと踊ったホールを見遣る。
けれど、それから数日後。
モニカは父親と共に、エルネストと彼の両親から呼び出しを受けることになる。
そこで言い渡されたのは、彼女にとって驚くべき内容だった。