断る――――前にもそう言ったはずだ
「今更止めはせんよ。だが、本当に良いのかい? 婚期を逃してしまうかも知れないのに」

「それこそ今更ですわ。周りの令嬢には既に婚約者がいらっしゃいますもの」


 モニカは十七歳。同年代の令嬢の殆どが婚約を結んでいる年齢である。


「――――父親として、娘の夢を壊すわけにはいかんからな。無理に婚約を結ばせようとは思わんよ。
だが、それはさておき、私はモニカに幸せになって欲しいと願っている」


 もちろん、宰相の娘であるモニカに縁談が来なかったわけではない。けれど、モニカの夢のためにと、これまで婚約を断ってきたのである。


「ありがとうございます、お父様。わたくしのわがままを聞いてくださったこと、心から感謝しております。
今日から数カ月間、精一杯勤めさせていただきます」


 女官として働けるのは十八歳から。
 それまでの間、モニカは父親の小間使いとして城で働くことを許されたのである。


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