断る――――前にもそう言ったはずだ
(ほら。やっぱりなにかの間違いだわ)


 どうかそんな表情をしないでほしい。モニカはキュッと唇を引き結ぶ。

 俯きながら、国王からの返答を待つ。『実はエルネストは反対したんだが』と。

 しかし、モニカの問いかけに答えたのは他でもない。エルネスト本人だった。


「間違いなど一つもない。モニカ、君は僕の妃になるんだ」

「え?」


 モニカは自分の耳が信じられなかった。
 顔を上げ、エルネストの顔をまじまじと見上げてしまう。


「殿下はそれで良いのですか?」

「良いも悪いもない。既に決めたことだ」


 エルネストはきっぱりとそう断言する。真っ直ぐにモニカを見下ろし、彼は静かに息を吐いた。

 良いも悪いもない――――それはつまり、この結婚に彼の感情が反映されていないことを表している。

 けれど、彼が納得しているなら、モニカにはもう言うことはない。


「――――謹んでお受けいたします」


 彼女は深々と頭を下げた。


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