断る――――前にもそう言ったはずだ
「あの、エルネスト様。こんなに毎日、来ていただかなくても良いのですよ? なんならわたくしの方からお部屋の方に向かいますし、なんだか申し訳なくて……」

「断る。いつ、何処に向かおうと、僕の勝手だ」

「そうですか。……そうですわね」


 本人が納得しているなら、モニカから言うことは何もない。
 とはいえ、どうせならばもう少し楽しそうな表情を浮かべてほしいところ。


(エルネスト様はどうやったらわたくしに笑いかけてくださるのかしら)


 側近たちに対しても、護衛騎士たちにも、侍女にも、どんな人に対しても柔らかく微笑みかける彼が、モニカに笑顔を見せてくれたのはたった一度だけ。
 初対面の、ほんの一瞬のことだ。
 それだって、元々は父親に対して笑いかけていたのだから、ノーカウントと言って差し支えないだろう。


(せめて結婚式では笑顔をみせてほしいものだわ)


 相変わらず何を考えているのかちっとも分からない婚約者に向け、モニカは苦笑を浮かべた。


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