断る――――前にもそう言ったはずだ
***


 からりと晴れた春のある日のこと、モニカとエルネストは結婚式を挙げた。

 豪華で美しいウェディングドレス。宝石がたくさんあしらわれたティアラを載せ、今日のために集まってくれた沢山の人々の祝福を受ける。

 たくさんの花で彩られたバージンロードの向こう側、エルネストはいつものように、冷めた表情を浮かべていた。


(やっぱり、今日も笑顔を見せては貰えないのね)


 覚悟していたとは言え、悲しくないと言ったら嘘になる。
 モニカは微笑みを浮かべつつ、一人密かに息を吐いた。


「新郎エルネスト――――貴方は病める時も健やかなる時も、喜びの時も悲しみの時も、互いを愛し、敬い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


 たとえ政略結婚であっても誓いの言葉は必要らしい。

 エルネストはモニカを愛してくれないだろうに――――それでも隣から「誓います」とはっきりとした返事が聞こえて、モニカは目頭が熱くなった。


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