断る――――前にもそう言ったはずだ
(綺麗な人……)


 眩い金の髪に、宝石のように美しい紫色の瞳。彫刻のように整った顔立ちに、引き締まった体躯。それから彼の柔らかな笑みに、モニカは一瞬で魅了されてしまう。エルネストはまさに乙女の理想を具現化した男性だった。


(いけない)


 いくら美しくとも、王族をまじまじと見つめるなんて失礼だ。
 モニカは気を取り直し、深く膝を折って頭を下げる。


「はじめまして。モニカ・ロべーヌと申します」

「――――モニカというのか」


 どのぐらい経っただろう。エルネストから声を掛けられ、モニカは静かに顔を上げる。
 けれど、次の瞬間、それまで柔和だった彼の表情が一転。酷く冷ややかなものへと変わっていた。
 

(え? ど、どうしましょう? わたくし、殿下の気分を害してしまった……⁉)


 先程まじまじと見つめてしまったことが原因だろうか。それとも、挨拶の仕方が悪かったのだろうか。
 モニカは声には出さぬまま、密かにパニックに陥る。


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