断る――――前にもそう言ったはずだ
「殿下、この後の予定なのですが」


 物思いに浸っていたエルネストに、側近の一人が声をかける。


「正直言ってかなりハードスケジュールですよ? 貴族たちについては、やはり妃殿下にお願いしたほうが良いのでは有りませんか?」


 エルネストはため息を吐きつつ、眉間にグッと皺を寄せる。


「お前は今日の来訪者が誰か、聞いていなかったのか?」


「それは……ドゥルガー侯爵に、カステルノー伯爵、それからレディアン子爵ですが――――あ!」

「気づいたか。全員、僕に側妃を勧め続けている連中だ。
恐らく、僕のところに事前に話が来なかったのは意図的なこと。僕から色よい返事が貰えないから、モニカのところに直談判に行こうとしたのだろう」


 人の口に戸は立てられないため、モニカとて、エルネストが側妃を勧められていることは知っているだろう。
 けれど、誰が、どのぐらいこの件に関わっているか、彼女は知らないはずだ。


(モニカを煩わせるわけにはいかない)


 心優しいモニカのことだ。
 不妊のことで嫌味を言われれば傷つくだろうし、エルネストに妃を勧めようと考えるかも知れない。

 不必要に傷つけないよう、矢面に立つのは自分でありたいとエルネストは思っていた。
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