断る――――前にもそう言ったはずだ
***


 カステルノー伯爵を応接室に案内し、お茶の準備を侍女たちに頼む。
 すると、ティーポットと茶菓子とともに、すぐにコゼットが現れた。


「お父様! 城内でお会いできるなんて、とても嬉しいです!」


 久々の再会なのだろう。モニカは父娘の温かいやり取りを見守りつつ、準備を進めてくれている他の侍女たちに礼を言う。


「王都での滞在期間もあと少しだからね。最近おまえの元気がないと聞いていたし、会えて良かったよ」


 カステルノー伯爵がそう言うと、コゼットは「それは……」と言葉を濁しつつ、モニカのことをチラチラ見遣る。


「ん? 妃殿下に関係することなのかい?」

「い、いえ。直接的には。
けれど、このままでは妃殿下にあまりにも申し訳なくて」


 一応声を潜めているものの、二人の会話は筒抜けだ。モニカは苦笑しつつ、聞こえないふりを続ける。


「コゼット、そろそろ行くわよ」


 たまりかねた侍女たちが、コゼットに声を掛けた。コゼットは「そうね」と口にして、恭しく礼をする。
 室内にはモニカとカステルノー伯爵、それから護衛騎士たちだけが残った。


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