断る――――前にもそう言ったはずだ
「ねえ、コゼット。この間『どうしたら良いのか分からない』って言っていたけど――――あの問題は解決したの?」


 モニカが尋ねれば、コゼットは大きな瞳を震わせて、それからゆっくりと視線を逸した。


「いいえ、妃殿下。まだでございます。けれど……」


 コゼットは感極まったのか、モニカの前だと言うのに泣き始めてしまった。余程悩んでいたのだろう。モニカはハンカチを差し出し、彼女の肩をそっと抱いた。


「一体何があったの? 話してごらんなさい? 安心して。誰にも言わないから」


 ことはモニカに関わること。しかも、コゼットがこんなに追い詰められているぐらいだ。本当は知らないままのほうが幸せかもしれないとも思うのだが――――。


「実は……エルネスト殿下が、私に想いを寄せていらっしゃるみたいなんです」

「…………え?」


 思いがけない言葉。
 時間が止まってしまったかのように感じられる。


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