断る――――前にもそう言ったはずだ
(嫌っている? ……モニカを、僕が?)


 言葉の意味は理解できても、状況が、言わんとしたいことが、全くもって理解できない。


(本当に、一体この女は何を言っているんだ? 僕がモニカを嫌っているだなんて、そんなこと、ある筈がないのに……)


 エルネストの困惑ぶりに、今度はコゼットが目を瞠った。


「もしかして、無自覚でしたの? 周囲はとっくに気づいておりましたわよ?」

「無自覚……? 気づいて……? お前は一体、何を言っているんだ?」


 エルネストはモニカを嫌っているどころか、心の底から愛している。
 無自覚だとか、そういう次元の話ではない。
 完全なる誤解だ。

 けれど、目の前のコゼットは、エルネストがモニカを嫌っていると信じて疑っていない。
 おまけに、彼女だけでなく周囲までもがそのように誤解をしているというのだ。


(もしかして、モニカもそう感じているのか?)


 エルネストが彼女を嫌っていると。
 だとしたら、早くモニカの誤解を解かなければ――――彼は勢いよく踵を返す。


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