断る――――前にもそう言ったはずだ
「ねえ、エルネスト様。そんなことより、私と未来のお話をしましょう? 嫌っている女性と寝室を共にするより、このまま私と朝を迎えていただいた方が、ずっとこの国のためになります。私がきっと、エルネスト様の子を産んで差し上げますわ。モニカ様のように、貴方の機嫌を損ねること無く、きっと愛される妃になりますから――――」

「僕はモニカを愛している」


 縋り付いてくるコゼットの手を払い、エルネストがきっぱりと宣言する。


「え……? そんな……嘘でしょう?」


 コゼットはその場に尻餅をつき、口の端を引き攣らせた。


「嘘じゃない。
僕はモニカを愛している。
これから先も、彼女以外を愛することはないし、寝室を共にする気は全くない。
分かったら、さっさとこの部屋から出ていけ。不愉快だ」


 冷たい眼差し、冷たい声音。
 普段それは、モニカにのみ向けられているものなのに――――コゼットはどうしても今の状況が信じられない。
 諦められるはずがなかった。


「――――今、私がこの部屋にいることが、モニカ様の思し召しだとしてもですか?」


 コゼットの言葉に、エルネストの胸が激しく痛む。

 彼女がこの部屋に居た時点で、そうだろうと察しはついていた。
 けれど、事実を突きつけられるのはあまりにも辛い。エルネストは苦痛に顔を歪めた。


< 64 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop