断る――――前にもそう言ったはずだ
(――――ううん。そもそも、内側から鍵をかけたはずなのに、一体どうして……?)

「一人寝は寂しいでしょう? 俺が貴女を慰めて差し上げたいと思いまして」


 ヴィクトルが微笑む。モニカは反射的に目を見開いた。


「何を言っているの⁉ わたくしがそんなことを思うはずないでしょう⁉」


 こうしている間にも、ヴィクトルがモニカに向かってにじり寄ってくる。
 モニカは急いで、ベッドから降りた。


「そんなことを思うはずがない? ああ、お可哀想な妃殿下。俺に対して嘘など吐かなくて良いのです。
王太子殿下にはちっとも愛されなかったうえ、侍女に浮気をされてしまうなんて、悲しくないはずがありません。苦しくないはずがありません。
妃殿下も俺と楽しみましょう。男性だけが浮気を許されるなんて、不公平ですから」

「ふざけないで! わたくしはそんなこと、望んでないわ!」

  
 ヴィクトルがこんなことを言うだなんて、思っても見なかった。
 真面目で誠実で、仕事熱心な護衛だと思っていた。
 それなのに、どうして?

 疑問が次々に浮かび上がってくる。


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