断る――――前にもそう言ったはずだ

14.エルネストの告白

 モニカの目の前で、騎士たちがヴィクトルを組み伏せる。こうなることを覚悟していたからだろうか? 彼は大して抵抗もしないまま、部屋から連行されていった。


(ヴィクトル……)


 彼はどうしてこんな愚かなことをしてしまったのだろう?
 どこか哀愁の漂う後ろ姿を見送りつつ、モニカは胸が苦しくなる。


「モニカ――――どうかこのまま、僕の話を聞いてほしい。
君は僕が、モニカのことを嫌っていると――――そう思っているのだろうか?」


 背後から聞こえる、酷くか細いエルネストの声。
 躊躇いつつもモニカは小さく頷いた。


「……すまなかった」


 深いため息。モニカは首を横に振る。


「いいえ、エルネスト様。好き嫌いは誰にだってございます。それは仕方のないことです。寧ろ、エルネスト様のために己を変えられなかったわたくしが悪くて――――」

「違う、そうじゃない」


 エルネストはそう言って、モニカの正面に回り込む。涙で真っ赤に染まった瞳。彼の眉は苦しげに歪められ、見ているこちらが切なくなってしまうほど。


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