断る――――前にもそう言ったはずだ
「大体、娘を危険に晒したのはお前自身だろう⁉ 中途半端に情けをかけ、我が娘、コゼットを侍女に据えたのだから。
何が『権力が一極に集中するのを避けたい』だ! 『あらゆる派閥の意見を取り入れたい』だ! 宰相が聞いて呆れる! 
理想ばかりを語り、無闇に他人を信じるなど、愚か者のすることだ。騙される方が悪いのだ!
私は――――私の娘は何も悪くない!」 


 狂気に満ちた高笑いが虚しく響き渡り、やがて慟哭へと変わっていく。

 醜い嫉妬と権力欲に塗れた愚行。
 情状酌量の余地は当然ない。

 
 モニカはエルネストと護衛騎士を伴い、コゼットとヴィクトルの元へ向かった。
 コゼットは不貞腐れたような、悔しげな顔を浮かべながら、モニカとエルネストを交互に見ている。
 モニカは彼女の傍に屈み、静かにこう問いかけた。


「コゼット……貴女は、貴女のお父様のために、こんなことをしたのよね?」


 寧ろそうだと言ってほしい――――そうすれば、彼女の命ぐらいは助けられるかもしれない。
 祈るような気持ちで、モニカは彼女の返答を待つ。


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