断る――――前にもそう言ったはずだ
 コゼットの言葉に、集まっていた皆が息を呑む。

 彼女の言う通り、この場にいる誰もが、エルネストのモニカへの態度を諌めはしなかった。窘めもしなかった。
 『エルネストがモニカを嫌っている』ように見えていたという部分も含め、コゼットの主張にはなんら誤りはない。エルネストは嫌でもそう思い知った。


「――――君の言う通り、元を辿れば悪いのは僕だ。これから僕の一生をかけて、モニカに償いをするつもりだ。二度とこんなことが起こらないよう、僕が必ずモニカを守る――――そう誓うよ」


 もしもエルネストがモニカを大切にしていたら――――その感情の一部だけでも表に出せていたなら、コゼットはこんなことをしなかったかもしれない。野心に燃える父親を宥め、侍女として真摯にモニカに仕え、側妃として成り上がろうなんて考えなかったかもしれない。


 コゼットは一瞬だけ悲しげな表情を浮かべ、俯いた。
 きっと、彼女がエルネストに恋していたのは本当だったのだろう。モニカはとても複雑な心境だった。


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