断る――――前にもそう言ったはずだ
「エルネスト様……わたくしはこの三年間辛かったし、悲しかったです。ずっと、貴方に嫌われていると思っていました。けれど、直接尋ねることも怖くて。
エルネスト様はいつも、わたくしが言うことを否定なさるから」


 気にしていないと言うのは簡単だ。
 無かったことにだってできなくもない。

 けれど、それではコゼットやヴィクトルに対してあまりにも失礼だ。
 エルネストは、彼の態度が二人の命を奪った一因であることを自覚して、これからの人生を生きていかなければならない。態度を改めなければならない。
 それこそが、彼のモニカに対する償いだとモニカは思う。


「そうだな……僕は自分の考えばかりを優先して、君の考えを聞くこともしなかったんだよな」

「ええ。聞いてほしいとお伝えしても、いつも冷たい表情をされるばかりで……それはやはり、悲しいことでしたわ」


 こんな風に気持ちを伝えるのはどれぐらいぶりだろう? ――――いや、はじめてのことだ。
 モニカは苦笑いをしつつ、エルネストを真っ直ぐに見つめる。


< 86 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop