堅物の軍人貴族は若妻を愛してやまない
「クシェル様、今しがた、フロレンティーナ様が突然いらっしゃいまして、客間でお待ちです」

屋敷に戻ろうとすると、クシェル付きのメイドが駆け寄ってきた。

こんなに朝早くから、と驚くことはなかった。
クシェルの姉であるフロレンティーナは、自分とは違い自由奔放で行動力がある。

「クシェル様は薔薇のお手入れをされていますので、とお伝えしたのですが、待つからいいと」

メイドが少し批難を込めた口調で言うが、クシェルは小さく微笑んだ。

「すぐにお会いします。お姉さまがお好きな茶葉はまだありましたでしょう? お出しして」

フロレンティーナはこの国の典型的な美女だ。
すらりと細い肢体に抜けるように白い肌。
輝くような金髪に美しい碧眼。
流行のスタイルに高く結い上げた金髪から宝飾を揺らし、白肌に映える淡い桃色のシルクのドレスを華麗に着こなす姿は、いつ見ても惚れ惚れしてしまう。

(まるで女神様だわ)

と見惚れているクシェルに、フロレンティーナは相変わらずの高慢とした態度で話しかけた。
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