※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

「情けない話なんですがこれまで恋愛に関してはほぼ受身だったので、紗良さんとこういう関係になってからは自分でも試行錯誤している段階なんです」
「意外ですね……。静流さん、結構慣れている感じがしたので」
「必死ですよ。私にとって紗良さんは絶対に手放したくない存在なんです」

 静流の偽らざる本心を聞いて、きゅうっと胸が疼いた。この人に好きになってもらえて、なんて幸せなんだろう。
 嬉しくて……少しだけ切ない。
 
(私は静流さんをちゃんと好きになれるだろうか……)

 おやすみの優しいキスが額に降ってくる。
 紗良はたまらなくなり、えいやと静流に抱きついた。
 二人は夜通しとりとめのないことを話した。

 にゃにゃ丸の話。
 静流が普段読んでいる本の話。
 遼とほのかの笑い話。

 焦らなくてもいい。ゆっくり進めていけばいい。時間はたっぷりあるのだから。

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