※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
9.過去を超えていけ!
「秋野?本社に戻ってきたの?」
「はい。一課にいました」
一課で周平と遭遇したことを木藤に話すと、見る見るうちに目が釣り上がり般若のような表情に変わっていった。
「わかった。今からぶん殴りに行ってくる」
「わあっ!!やめてください木藤さん!!」
紗良は今にも一課に殴り込みに行きそうな木藤に懸命にしがみついた。気持ちは嬉しいが、喧嘩なんて絶対にまずい。必死になって説得すると木藤は渋々矛を収めてくれた。
「あちらだって昔の女のことなんてどうでもいいって思っていますよ」
「それがそうとも限らないみたいっす」
紗良が木藤を説得している間もノートパソコンに向かいチャットツールを使っていた吉住がようやく口を開く。
「福岡支店に俺の同期がいるんですけど、秋野さん、福岡に転勤になった後に離婚したらしいっす」
吉住はそう言うと彼の同期とのチャットのやり取りを見せてくれた。
「離婚って……!?どうして?」
「さあ?その辺は俺の同期も詳しい話は知らないみたいです」
福岡時代の同僚でも知らないということは離婚の詳細は本人にでも聞くしかない。