※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
「今日はお祝いですね」
スピカから帰る道中、静流は嬉しそうに提案した。
「気が早いですよ……。これから結婚式も控えていて出費も増えるのに」
秋に行う結婚式には親族と親しい友人だけを招く予定だったが、小規模とはいえそれなりにお金はかかる。
ちなみに結婚式には片岡も参加する予定だ。
「金銭面での苦労は考えなくていいですよ。夫を支えるのが妻の役目なら、妻を支えるのも夫の役目ですから」
「もう!!そうやってすぐに甘やかすんですから〜!!」
「紗良さんが素直に甘えてくれないからですよ」
静流はそう言うけれど、紗良はもう十分過ぎるほど静流に甘えている。
会社を辞めてスピカで働くことを即決できたのは静流のおかげだ。
階段から落ちそうになった時、夢を実現させないまま生涯を終えるかもと思ったら悔しくてたまらなかった。
だから、チャンスがやってきたらちゃんとこの手で掴もうと心に決めていた。
きっと何があろうと静流が紗良を支えてくれる。
ひとりではないということはなんて素晴らしいのだろう。
「帰りましょうか」
「はい」
さあ、帰ろう。二人のスイートホームに。
おわり