※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
程なくして静流の運転する車は目的地に到着した。フロントで受付を済ませると客室に案内される。
案内されたのは二十五階のスーペリアスイートルームだ。
ローテーブルはテーブルセッティングが済まされており、ドリンクメニューとカトラリーが並べられていた。
ソファに座った紗良はドリンクメニューを見ながら悩みに悩んだ。
(どうしよう……。全部飲んでみたい!!)
自他共に認める紅茶オタクの紗良は、メニューのひとつひとつを隅から隅まで熟読した。王室御用達の高級紅茶、出来ることならすべての種類を頂きたい。
しかし、紅茶だけでお腹一杯になったらそれはそれでもったいない。
「紗良さん、私の分も好きに選んでいただいて構いませんよ。半分ずつ飲みましょう」
「いいんですか!?」
「はい。ゆっくり選んでください」
静流からの提案を受け、紗良はメニューの中から季節限定のゴールデンブレンドと、オーソドックスなダージリンを選んだ。