※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
お茶を頼んでしばらくすると、専用のワゴンに乗せられ茶器が運ばれてくる。
カップに注がれた紅茶をひと口飲んだ紗良は感激した。紅茶の風味、淹れ方ともに文句なしに素晴らしい。
お茶を堪能した後はアフタヌーンティーのメインであるフードが運ばれてきた。
三段のケーキスタンドの上には色とりどりのフードが並んでいた。
カボチャのプチタルト、ワタリガニのカニコロッケ、いちじくのケーキサレ……。どれもため息をつくほどに綺麗で洗練されていた。
「食べる前に写真を撮ってもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
槙島パークホテルのアフタヌーンティーを頂けるなんて滅多にない。あらゆる角度で写真を撮らねば後悔してしまう。
静流も紗良を習うようにスマホで写真を撮りだした。
もちろん、月城に見せる用だ。
顔が入らないようにアングルを工夫し、紗良の指輪や髪、手などを映り込ませれば妻と二人で来ましたという雰囲気は醸し出せる。
SNSで時々話題になる匂わせ女子の男性バージョンとでも言えばいいのだろうか。
「ふう、これくらいでいいですかね……。静流さんの方も撮り終わりました?」
紗良はそう言うと静流のスマホを覗き込んだ。