※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
「あ」
不意をつかれた静流は思わず、しまったとばかりに声を上げた。
静流のスマホにはばっちり紗良の顔が映りこんだ写真が表示されていた。それも、変な体勢でスマホを構えている写真ばかりが何枚も!
「え、や!?なんで?」
「すみません。つい……」
何が『つい』だ。見つからなかったらこっそりこの写真を隠し持ってひとりで楽しむつもりだったの?
「もう!!消してください!!」
「他の人には見せませんからいいでしょう?」
「嫌ですよ!!」
紗良は静流のスマホを取り上げ、そのまま部屋の中を逃げ回った。
はしたなく大股になって口をとんがらせて写真を撮りまくる珍妙な顔なんて静流にだって見られたくないのに!
「消しますからね!!」
「ダメですよ。返してください」
「あっ……!!」
奪われたスマホを取り返そうと揉めているうちに、二人は一緒にクイーンベッドに倒れ込んだ。
ベッドと静流の間に挟まれた紗良の心拍数が徐々に上がっていく。眼前に静流の整った顔立ちが迫る。
「紗良さん」
真剣な眼差しで紗良を見つめてくる静流から目が離せなくなる。耳元に唇が近づいていき、紗良は静流のスマホを胸に抱えながら、ぎゅっと目を瞑った。