苺くんは、 蜜柑ちゃんを愛してやまない
そんなある日。

いつものようにカフェに向かう。
蜜柑はいなくて、しばらく待つ。

いくら待っても蜜柑は来なくて、ただ蜜柑のいつも座っている席を見つめていた。

ふと、スマホを見る。
「……………
………あ!今日、水曜日だった!」

そう。
水曜日は、蜜柑がカフェに来ない日だ。

これは━━━━ここ一年半の間ずっと、このカフェで蜜柑を見つめていた故に得た情報だ。

蜜柑に関することは“全て”頭の中に入っている。

月、木、金は、12時半から14時半頃までいる。
その中で木曜日のみ、一人でいる。
火曜日は、11時頃から13時頃まで。
水曜日は午後の一限のみのため、講義後はそのまま帰ってしまうのだ。

他にも━━━━
名前が“蜜柑”なので、蜜柑に関することには目が無いこと。
恋人は今いなくて、今まで二人と付き合ってたこと。
そしてどちらの元彼も、後輩だったこと。
天然でおっとりしているが、スポーツが好きなこと。
家事は得意ではないが、家事全般するのが好きなこと。

蜜柑は一虎の存在すら知らないのに、蜜柑の情報が日に日に増えていった。


蜜柑がいないなら、ここにとどまる理由はない。
カフェを出て、門に向かった。

雲行きが怪しくなる、空。
あっという間に真っ黒な雨雲が広がり、雨が降りだした。

「あーもー!ツイてない!!」
空を睨み付け、近くの建物の屋根で雨宿りする。
小降りになるまで待ってようと思い、ボーッと空を見上げていた。

するとパシャパシャと音をさせ、頭の上に鞄を乗せ雨を避けるようにして学生が駆けてくる。
そして一虎の隣に雨宿りをしにきた。

一虎は特に気にすることなく、空を見上げた。

「ひゃー!!靴の中まで、ぐしゃぐしゃ……
あーあ!お気に入りのスニーカーだったのにぃー!」

「え………」
声を聞いて、思わず隣の学生を見た。

━━━━━━!!!!?

全身が、心臓になったようにドキドキして震えだす。
身体が熱くなって、目が離せない。

「蜜柑…ちゃ……」
思わず、名前を呼んでしまう。

(なんでいるの?
今日は、水曜日だよ?
もう、大学にいない日じゃ……)

「………え?あの……何か?」
視線を感じ、蜜柑が一虎を見上げた。


初めて、一虎と蜜柑の目が合った━━━━━━


一気に、一虎の顔や耳まで真っ赤になる。
「あ…あ……」

一虎は、初めて目が合った驚喜と緊張で声が出せず固まっていた。
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