苺くんは、 蜜柑ちゃんを愛してやまない
「あの、大丈夫ですか!?
あ!雨で、身体冷やして風邪引いたとか!?
とりあえず、拭かないと!!」

固まり何も言わない一虎に、蜜柑は慌てたように鞄からハンカチを出し渡そうとする。

「「あ……」」
しかし、蜜柑のハンカチはびしょびしょに濡れていた。

「あ!ごめんなさい!!今日、お水こぼして拭いたんだった……!
どうしよう……」

「フフ…」
思わず、噴き出す一虎。

なんて、可愛いんだろう━━━━━

俺の力になろうとして、空回りしてる姿。
“俺のために”何かできることがないか考えてる姿。

もう……蜜柑ちゃんが可愛すぎて、どうにかなる。

「━━━━━━大丈夫だよ!
俺、ハンカチ持ってるから!
はい!このハンカチ、蜜柑ちゃんが使って!」
そう言って、ポケットからハンカチを取り出し蜜柑に差し出した。

それは“あの”蜜柑柄のハンカチだった━━━━━

「え?私の名前、どうして?
…………あ!蜜柑!!?可愛い~!!」
名前が知られていることを不思議に思いながらも、差し出されたハンカチに心が奪われる、蜜柑。

「どうぞ?
俺は、大丈夫だから!」
「え?でも……」

「いいから!」
蜜柑の手を掴み、握らせる。
(わ…////手、小さっ/////
なのに柔らかくて、気持ちいい…!)

「ありがとうございます…!」
見上げて、ふわっと微笑んだ。

(はぁ…可愛い…可愛すぎ…////)
握った手が離せない。

離したくない。
このまま、連れ去りたい。

でもせっかく見つめて話すことができたのに、嫌われたくない。

一虎はゆっくり手を離し、頭をポンポンと撫でた。
「あ…小降りになってきたし、俺行くね!」

離れたくないが、このままいると本当に連れ去りたくなる。
一虎は、走って去ろうとする。

「あ!待ってください!」
今度は蜜柑が、一虎の手を掴む。

「え?」
「ハンカチ、ちゃんと洗濯して返したいんですが……」

「あー!
明日、◯◯カフェで会おう!
俺、蜜柑ちゃんのことカフェで前から見かけてて」

「あ、それで私の名前…!」
「うん、そうだよ!」

「じゃあ明日、お返ししますね!」
「うん!」

一虎は、とても幸せな気分でその場を後にしたのだった。
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