苺くんは、 蜜柑ちゃんを愛してやまない
「━━━━一虎くん、もうそろそろ着替えてきたら?
スーツ、シワになるよ?
私も、一度脱いで夕ご飯の準備再開しなきゃ!」

「えー!!やだー!もっと、もっとギュってしよ?」
中に入り、そのままソファに並んで座って抱き締められている蜜柑。

なかなか一虎が離れないのだ。

「夕ご飯作り、途中なの。お願い、一虎くん」

「だってぇ、可愛いんだもん!
蜜柑ちゃん、可愛すぎ!
………はぁ…ダメだ…蜜柑ちゃんが可愛すぎて、どうにかなる…」
そう言って抱きつき、そのままソファに押し倒した。
組み敷いた一虎は、蜜柑の口唇や頬、額等に小さなキスを繰り返す。

「ひゃっ!!?
一虎く…やめ…////夕…ごは…作らな……きゃ…////」
「ダメ…蜜柑ちゃんが、こんな可愛い格好するから悪いの!
ただでさえ、蜜柑ちゃんは可愛すぎなのに、こんな格好したら可愛いが爆発するんだよ?
こんなの、俺を誘って煽ってるとしか思えない!!
はぁー可愛い、好き好き~!」

(ひゃー!!助けてぇー)
心の中で助けを求めていると、突然一虎からスマホの着信音が響いた。

それでも一虎は聞こえないのか、全く無視だ。
「一虎く…電…話……鳴ってるよ…」

「うん。
でも無視、無視」
「だ、ダメだよ!!
お仕事の電話かもでしょ?」

「えー!!」
「一虎くん!!」

「わ…/////怒った顔、可愛い////」
つい、ポロッと本音が出てしまう。

「なっ…////
じゃあ、もう知らない!!
今日はお風呂一緒に入んない!」

「え?」

「一緒に寝ない!」

「え……」

「極めつけは、口も聞かない!!」
頬を膨らませ、そっぽを向いてしまった。
そして固まってしまった一虎から、這うように抜けて出て動きやすい服に着替えるためクローゼットへ向かった。

リビングに取り残された、一虎。
あまりのショックに、動けなくなっていた。

しかし、少しずつ雰囲気が黒く染まって行く。

そしてクローゼットへ、蜜柑を追いかけた。
着替えている蜜柑の背中に、声をかける。
「蜜柑ちゃん!!ごめんね!!
ごめんなさい!!
今からスーツ着替えたら、電話折り返すから許してください!!
風呂、一緒に入りたい!
一緒に寝たい!
口聞いてくれないなんて“死ね”って言われてるみたいに苦しい!!
せめて、口は聞いて?
風呂と寝るのは、我慢するから!」

許されたくて、必死に謝る。

「━━━━いいよ」
背中を向けたまま、蜜柑が呟くように言う。
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