苺くんは、 蜜柑ちゃんを愛してやまない
「━━━━え?土曜日、一緒にいれないの!?」

一虎が漸く落ち着き、夕ご飯を食べている二人。
蜜柑の言葉に、思わず箸が止まる。

「うん、莉帆ちゃんとレポート書く約束したの!」

「莉帆ちゃんと二人で?」
「うん」

「何処で?大学?」
「ううん。莉帆ちゃん家」

「だったら、ここでレポート書けばいいでしょ?
莉帆ちゃんに来てもらってさ。
俺の傍にいて?」

「………」

「ん?蜜柑ちゃん?」
ジッと見つめられ、一虎は首を傾げて蜜柑を見つめ返す。

「一虎くんといたら、全然!レポート進まないからやだ!
先月のレポート、全く進まなくて大変だったんだよ?」

「あー!
━━━━━━━━━」


先月。
まだ結婚はしていなかったが、休みの日は一虎のマンションに泊まっていた蜜柑。
レポートを書くのに、一虎のパソコンを借りてレポートを作成していた蜜柑。
一虎がやたらとちょっかいをかけて、蜜柑は結局レポートが間に合わなかったのだ。

『蜜柑ちゃーん!まだぁー?』

『蜜柑ちゃーん!こっち向いて~』

『キスしようよぉー、蜜柑ちゃーん』

後ろから抱きつき、頬や首にキス責めをしていた。



「━━━━━ってな感じだったでしょ?
だから、やだ!」

「…………わかった」
あのあと、蜜柑にこってりしぼられた。

一虎的には、怒った蜜柑を見るのもそれはそれで興奮するが、さっきのように“口聞かない”なんて言われては本当に生きている心地がしない。

しかたなく、頷くのだった。

「そんな多くはないし、夕方までには帰るからね!」


そして土曜日。
朝早くに出ていった、蜜柑。
「早く帰って来てね!」
「うん!行ってきます!」

「あ!待って!やっぱ、莉帆ちゃん家まで送る!」

莉帆のアパート前で別れた。

とぼとぼとマンションに帰る。
帰りつき、魂が抜けたようにソファに座った。

ボーッと窓から見える景色を見ていた。

リビング内に、時計の秒針の音だけが響いている。


なんと一虎は、この体勢のまま夕方まで過ごしたのだ。
(昼食はもちろん。
水も口にせず、ただひたすらソファに座って外を見ていた)

「あ…四時だ……
もうすぐ、帰ってくるかな?」
そこでやっと、ソファから立ち上がった一虎。

「腰、いてぇ…」

蜜柑がいないと、食事や水分さえも喉を通らず、全く何もする気も起こらない一虎だった。
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