苺くんは、 蜜柑ちゃんを愛してやまない
それから蜜柑は洗濯をして干し、自分も支度をして家を出た。

蜜柑は、大学二年生。
約1ヶ月前に、成人式を迎えたばかりだ。

徒歩圏内な為、ゆっくり歩いて大学へ向かう。
(電車通学させないために、一虎がわざわざ近くのマンションを選んだ)

大学へ着くと、友人・莉帆(りほ)がいた。
「おはよう、莉帆ちゃん!」
「おはよ!
どう?新婚生活は?
まだ、二週間くらいだけど(笑)」

「フフ…幸せ!!
一虎くんが可愛いのー!」
「可愛いの?」

「うん!ギュッてしよ?とか、ネクタイしめてー?とか、食べさせてーとか!」

「か、可愛いの?それ(笑)」
「うん!」

「可愛いかな…?(笑)
一回り以上も年上なんだよね?旦那さん」
「うん!十…八歳上かな?」

「ひ、退かない?」
「退くの?どうして?」

「━━━━━退くだろ!?それ(笑)」

「「え…!?」」
突然後ろから声がして、蜜柑と莉帆が振り返る。

男友達の大夜(だいや)がいた。

「大くん!」
「大夜だ!」

「おっさんのその甘え、退くわ~(笑)」

「おっさん?」
「うん。おっさん」
「おっさんって、誰のこと?」

「苺」

「一虎くん、おっさんじゃないもん!」
蜜柑はつい、声を荒らげてしまう。

「そ、そんなムキになることないだろ?」
「あ…ご、ごめん…」
苦笑いをする大夜に、蜜柑はシュンとして俯いた。

「感覚は人それぞれだが、二十歳の俺等からしたら、40前の男なんておっさんだぞ?」

「そんなことないよ。
一虎くん、とってもカッコいいし、頭いいし、社長さんだし、優しいし、可愛いし……
まだまだあるよ?素敵なとこ!何でもできる完璧な人だもん」
必死に大夜に言う蜜柑。

「まぁ、でも……要するに!大夜は、ヤキモチ妬いてんでしょ?」
そんな蜜柑と大夜のやり取りを聞きながら、莉帆が意味深に言った。

「はい?」

「だって“まだ”好きなんでしょ?蜜柑のこと」

蜜柑、莉帆、大夜は高校の時からの同級生。
大夜は、蜜柑にずっと惚れていて高校の卒業式で告白したのだが一度振られている。
それは、蜜柑にとって大夜は兄のような存在だったからだ。
「え……だ、大くん?」

「は?
………んなわけないだろ!?
俺、彼女いるし」
大夜は莉帆のことを少し睨み付け、少し離れた席に座った。
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