苺くんは、 蜜柑ちゃんを愛してやまない
「………莉帆ちゃんも、一虎くんのことおっさんって思う?」
窺うように言った、蜜柑。

「んー、一虎さんのことはおっさんと思わない」

「ほんと!?」

「でも、38って聞くと…おじさんって思っちゃうかな……正直…」
「そっか…」

「確かに、一虎さんっていわゆるスパダリだもん!
おっさんって感じじゃないわ!」
「だよね!」

「ただ……」

「ん?」
「………」
言いにくそうに口をつぐむ、莉帆。

「いいよ!莉帆ちゃんなら!
思ったこと言ってもらって」

「その歳で、蜜柑が言ってたような甘え方は退く……」

「そうかな~?でも、人前で甘えられるのはちょっと恥ずかしいけど…/////」
「でしょ?
甘えられるのはいいと思うけど、甘え方が……
私は、ウザいって思うかな……?」



「━━━━━ウザいかぁ…」
その日の帰り。
ポツリと呟きながら、自宅マンションへ帰る。

ルームウェアに着替え、夕食の準備にとりかかる。

“40前の男なんておっさんだぞ”

「おっさんじゃないもん……
……………
━━━━━━━あ……」
大夜の言葉が、頭の中をぐるぐる回っていた。

そしてそれに気を取られ、皿を下に落としてしまう。
ガッシャーーン!!と、大きな音がする。

何故か、涙が出た。

破片を拾う。
「………っ…ったい…」
破片で、指まで切ってしまう。

割れた皿を片付け、細かい破片を掃除機で吸い取り指を手当てしたところで、一虎が帰ってきた。

「ただいまぁ~!蜜柑ちゃーん!」

玄関に向かう前に、涙を拭き鏡で自分の顔を確認する。
「よし!」
と気合いをいれて、玄関に一虎を出迎えに行った。


「おかえり!一虎くん!」
微笑み言うと、一虎が両手を広げた。

「ギューってしたーい!蜜柑ちゃんを、補給しなきゃ!」
「うん…」
ゆっくり抱きつくと、抱き締められた。

「はぁ…落ち着く……」
「うん…」
(ヤバい…泣きそう……)

「………」
「………」

「蜜柑ちゃん」
「ん?」

「顔見せて?」
「もう少し、一虎くんの匂い嗅いでたい」
(今、顔上げたら、涙が……)

「えー!見せてー?」
「やだ…」

「蜜柑ちゃんの大好きなロールケーキ買ってきたのになぁー」

「え!?」
思わず顔を上げる。

「フフ…ほら!」
「ほんとだ!」

「食後に食べよ?」
「うん!」

「………」
ゆっくり、一虎が蜜柑の目元をなぞる。

「………あ…夕食、まだ全然できてないの。
急いで作るね!」

泣いてたことがバレる━━━━
そう思い、蜜柑は慌ててキッチンへ戻るため踵を返した。

━━━━━━!!?
ふわっと、また一虎の匂いがして後ろから抱き締められた。
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