苺くんは、 蜜柑ちゃんを愛してやまない
一虎と碧馬は、蜜柑と同じ大学の卒業生だ。

大学卒業後、二人で共同経営者として会社を立ち上げた。
色々苦労はあったが、今ではかなり大手の企業だ。

その関係で二人が世話になった教授から、経営学の特別講師をお願いされ、月に一度大学に講義をしに来ていた。

いつも講義後は、カフェでお茶をして帰る一虎と碧馬。
この日は、碧馬が私用のため一虎は一人でカフェにいた。

ふと窓側を見ると、蜜柑が一人で本を読んでいた。

「フッ…!」
蜜柑が読んでいる本のタイトルを見て、一虎は思わず噴き出した。

“様々な蜜柑。
奥の深い、蜜柑の種類”
図鑑のようなものを読んでいた、蜜柑。

蜜柑の可愛らしい容姿から想像できない内容に、可笑しくなって笑ったのだ。

しかも、蜜柑柄の筆箱、蜜柑のマスコット?のキーホルダーがついた、蜜柑柄のランチバッグがテーブルに置かれていた。

「フフ…どんだけ、蜜柑好きなんだ……!(笑)」

この日から、面白い子だなぁとなんとなく興味が湧くようになったのだ。


それからその次の月も、同じ席で蜜柑を見かけた一虎。
この日、蜜柑の名前を知る。

碧馬とコーヒーを飲んでいると、蜜柑と一緒にいた莉帆との会話が聞こえてきた。
「蜜柑、レポートできた?」

「ブハッ!!!?」
思わず、飲んでいたコーヒーを噴き出す。

「うわっ…!!?汚ねっ!!?
イチ!なんだよ、急に!!」

(名前まで“蜜柑”かよ!!?(笑))
クスクス笑い始める、一虎。

「イチ?」
「フフ…益々、興味湧いた……!」

「はい?」
碧馬が首を傾げ怪訝そうに見る中、一虎はただ…クスクス笑っていた。



それから一虎は、講師日以外にもカフェに通うようになる。

いつも窓際の席にいる蜜柑を見つめていた。

莉帆や他の友人と話してる姿。
一人で読書をしている姿。
スマホを操作している姿。
紅茶を飲みながら、ボーッと窓の外を眺めている姿。

日に日に、一虎の心は蜜柑でいっぱいになっていく。

話しかけようとするが、なかなかタイミングがつかめない。
あっという間に一年半近くも過ぎ、ただ……近くの席で見つめる日々が続いていた。


そんな時だった━━━━━━

“買いもんに付き合って”
休日。
碧馬に誘われ、街に出ていた一虎。

「━━━━━なんで、休みの日までお前に会わなきゃいけないの?」
「どうせ、暇だろ?
いいじゃん!」

「彼女への誕生日プレゼントくらい、一人で買いに行け!」

今日も、蜜柑が大学にいるかもしれない。

だから、大学に行こうと思っていた一虎。
碧馬を睨み付けて言った。
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