薔薇節 ━━しょうびせつ━━
一、 鳥
将棋指しなんて、ろくなものではありません。
「あら、薔薇」
生け垣の向こうに一輪をみとめて、わたしは散歩の足を止めました。
隣を行くひとは構わず通り過ぎようとするので、その紬の袖を引っ張ります。
「言緒さん。薔薇です」
練乳めいた花を指さすと、言緒さんは一瞥したあと、疑いの眼差しをわたしに向けました。
「これ、薔薇なの?」
「はい」
「私の知っている薔薇とはいろが違う。私を騙そうとしていない?」
「そんなことをして何の得があるのですか」
目線を合わせると、白薔薇は秋風に吹かれ、ふるんとお辞儀しました。
お行儀のよいこと。
「薔薇は、いろもかたちも、たくさん種類があるそうですよ」
「いろもかたちも違うなら、それは別の花じゃないの?」
「言緒さんと和香さんは全然似ていませんけど、同じご両親から生まれた兄妹ですよね」
言緒さんは胡散臭げに「白い薔薇か」とつぶやき、空を見上げました。
雲ひとつない、さわやかな秋晴れです。
「あら、薔薇」
生け垣の向こうに一輪をみとめて、わたしは散歩の足を止めました。
隣を行くひとは構わず通り過ぎようとするので、その紬の袖を引っ張ります。
「言緒さん。薔薇です」
練乳めいた花を指さすと、言緒さんは一瞥したあと、疑いの眼差しをわたしに向けました。
「これ、薔薇なの?」
「はい」
「私の知っている薔薇とはいろが違う。私を騙そうとしていない?」
「そんなことをして何の得があるのですか」
目線を合わせると、白薔薇は秋風に吹かれ、ふるんとお辞儀しました。
お行儀のよいこと。
「薔薇は、いろもかたちも、たくさん種類があるそうですよ」
「いろもかたちも違うなら、それは別の花じゃないの?」
「言緒さんと和香さんは全然似ていませんけど、同じご両親から生まれた兄妹ですよね」
言緒さんは胡散臭げに「白い薔薇か」とつぶやき、空を見上げました。
雲ひとつない、さわやかな秋晴れです。
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