Cherry Blossoms〜難解なカルテ〜

アルフレッドは、勉強を教えるために二人に会うことがたまにあるそうだ。英語を主に教えているらしい。

「勉強はどこでしてるの？図書館とか？」

一花がオールドファッションを一口食べ、アルフレッドに訊ねる。アルフレッドは首を横に振った。

「いや、詩織さんの家ですることがほとんどだよ。でも、お兄さんの哀くんは塾でいないし、お父さんの拓郎（たくろう）さんもお母さんの真子（まこ）さんも仕事でいないけどね」

「娘の心が壊れかけてるっていうのに、家族より仕事や勉強を優先する奴の思考が理解できねぇわ。いくら仕事や勉強ができたって、自分の大事な人のことを考えられなかったら終わりだろ」

ヨハンが嫌そうな顔をしながら言い、コーヒーを飲む。他人にそこまで興味を抱かない桜士ですら、あの家族に対して嫌悪感を抱いていた。

「今日も詩織さんのこと、引き取りに来ただけでしたからね。海外出身の男性が家に来て倒れている娘を発見したというのに、全く心配する素振りもありませんでしたし」