Cherry Blossoms〜難解なカルテ〜

ヨハンがそう言い、「早く説明しろよ」と桜士を睨むように見る。桜士はコホンと咳払いをした後、手に持っていた本を二人の前に見せた。それは、病院の図書室で借りたもので、そこには「精神疾患一覧表」と書かれている。

「この中で、藁科さんの症状に当てはまるものが一つあるんです」

桜士は付箋を貼って印をしてある箇所をめくる。そこに大きく書かれていたのは、「愛着障害」という文字だった。

「愛着障害とは、乳幼児期に何らかの原因により母親や父親など特定の養育者との愛着形成がうまくいかず、問題を抱えていることを言います。愛着障害の特徴としては、対人関係や社会性に困難があり、自傷行為をしてしまったり、誰かに依存してしまうこともあります」

桜士が説明をしていくも、詩織は何も言わずに無言でページを見ている。その隣で、昴はどこか驚いたような顔をしていた。

「問題は、藁科さんは誰に依存しているのかということです。私たちはずっと羽田さんに依存しているんだと思っていました。ですが、あなたの言動を見ていて気付いたんです」