Cherry Blossoms〜難解なカルテ〜



詩織と昴が帰った後、桜士たちはホッとし、詩織を説得できたアルフレッドに声をかける。

「アルフレッド〜、お前すごいな!」

「カウンセラーみたいだったわよ!」

ヨハンと一花がアルフレッドを褒め、彼はどこか照れ臭そうに笑う。そして、どこか切なげな顔で言った。

「……あの言葉は、あの時の俺が言ってほしかった台詞だから」

その表情と言葉に桜士は、彼に何かあったのかと気になってしまう。何があったのかと訊ねようとした刹那、救急科のドアが開く音がした。

薬剤部の人か、他病棟の人が来たのか、そう思いながら振り返った桜士は、歩いて来る人物を見て言葉を失ってしまう。

歩いて来る女性は、ブランド物の白いシャツに深い青のスカート、ブランド物のコートを羽織り、バッグもブランド物だ。パッと見れば、ブランド物好きな派手な女性だ。だが、女性の体は痩せ細り、ヨロヨロと老人のように覚束ない足取りで、元気はない。どこから見ても体調が悪いとわかる女性は、桜士たちのよく知っている人物だった。
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